おもしろんぶん その1

『ほぼヘテロ』

 今月号の雑誌OUT表紙のジョッシュ・ハッチャーソンさんは映画『キッズオールライト』でレズビアンカップルの息子として出演していたことでも有名です。そして、最近は『ハンガーゲーム』にも出演しています。その彼が雑誌OUTでインタビューを受けているのですが、その中で気になる語が出てきました。「僕は、『ほぼヘテロ』のひとりかな」と言っているのです。

ほぼ?


 ほぼヘテロ(mostly heterosexual)とは何だろうとおもい調べ始めたところ今年の春に出た、性指向についての論文に行き着きました。とても興味深い内容だったので、おもしろい!と思った所を中心に紹介します。

 今日、人の性指向を計る絶対的な基準は確立されていないですが、有名な指標としてキンゼイスケールがあります。6段階で人の性指向を計るのですがそこには3つのカテゴリーがあります。それは、0-ヘテロセクシュアル、2~4-バイセクシュアル、6-ホモセクシュアルです。論文の著者は1に位置づけられる人たちを「ほぼヘテロ」として新たな性指向のカテゴリーがあると主張しています。

 こういったカテゴリー分けは、人の性指向を考える上で作られたものなので、個人に焦点をあてれば様々な人がいるのは当たり前な事ですが、過去の調査から「ほぼヘテロ」のグループに独自のカテゴリーが設けられる統計結果がみられました。
 このグループの特徴はヘテロセクシュアルよりは同性への性指向があるがバイセクシュアルよりは異性への欲求が強いということです。また、それが一時的な感情ではなく、相対的にその性指向が持続していることも指摘しています。そして6カ国での調査から得られた結果をもとに試算すると、女性は7.6~9.5%,男性は3.6~4.1%が人口の中で「ほぼヘテロ」になると考えらるそうです。これは特に女性において、最大のセクシュアルマイノリティを形成しているグループになります。
 
 読んでいて非常に興味深かったのは、世代、地域による差がある事です。ほぼヘテロという人は若い世代に多く、例えば、紹介されている調査では50~55歳の女性の5倍の割合で、25~30歳の女性に「ほぼヘテロ」が多いというのです。また、都市部の方が「ほぼヘテロ」は多くなるようです。例えば、紹介されているNYでの調査では自らの性指向を「ストレートだが偏狭じゃない」や「僕は誰かいい男が来るまではストレート」といった記述がみられます。これには文化的な要因が考えられるかもしれません。

 実はこの研究はアメリカを中心とした英語圏国の調査がもとになっています。では日本ではどうなるのでしょうか。この論文の中でも指摘されたように政治的、社会的要因(たとえば同性愛権利の向上の運動)が「ほぼヘテロ」グループの理由であるかもしれないという考えが載っています。では逆に、社会的にセクシュアルマイノリティが認められない環境では「ほぼヘテロ」は統計的に少なくなるのではないでしょうか。なので、日本でこの調査をしたら、「ほぼヘテロ」はずっと少なくなるのではと思いました。

 ここで一つ反対意見が聞こえてきそうです。もし環境的要因で性指向が変化するならわざわざ同性愛に近づくような社会にする必要なない!と。そして、同性愛者は自分で望んでなった訳じゃないからいいけど・・と。ここには、間違った論理があります。雄と雌の生殖とヘテロセクシュアルの多さという事実は、それを個人が行うべきとする理由には論理的になりません。それは事実の確認にすぎず、人間は指を持つ人が多い、だからピアノを弾くべきだという論理と同等です。「ほぼヘテロ」から思うのは、人が選択できる可能性を広げる事です。セクシュアルマイノリティに対して寛容になるという事は、当事者のみでは無く、小さな傾向であったとしても同性愛的な要素を持つ人にとっても楽になる社会のはずです。実際、「自分の性指向バイセクシュアルではしっくりこないし、決められなかった」と発言している「ほぼヘテロ」もいます。
 
 性というと性行為そのものを連想しがちですが、そこにある感情や欲求、情緒など多くのことが人の性にはあると思います。体の仕組みだけではない性の多様な側面を性教育で義務教育から話す事ができるといいのになとおもいます。

ご興味を持った方は雑誌OUTと論文をご覧下さい!

参考文献/サイト
Ritch C. Savin-Williams, Zhana Vragalova(2013) Mostly heterosexual as a distinct sexual orientation group: A systematic review of the empirical evidence. Developmental Review33(2013)58-88

Psychology Today http://www.psychologytoday.com/blog/the-sexual-continuum/201309/what-does-it-mean-be-mostly-heterosexual

(みやざき)