【コラム17】「絵画の行間」/「Reading between the lines on Art Work」

gossip ニュースレター vol.17/2014 3月配信

「絵画の行間」

日本画家、松井冬子さんが出演したNHKの番組『旅のチカラ』を鑑賞しました。

番組宣伝文には、『「女の痛み」をテーマにした独特の作風の日本画家 松井冬子が、新たな作風を探して向かったのは、メキシコ南部の町フチタン。フチタンでは経済も祭りもすべて女性が主役で、男性は裏方。世界一“女”が輝く町といわれる。松井は、自分がこれまで描いてきたのとは正反対の世界で、どんな人々と出会い、どんなテーマを見つけ出すのか?』とあり、松井さんとマリアッチとはちょっとアンマッチ、などと思いながら、”旅番組”に出演する松井冬子さんはいったいどんな感じなのか、パーソナルな一面も垣間見ることができるのか、とあらゆる興味津々で鑑賞した次第です。

現地メキシコで松井冬子さんを案内したのは、美容室を経営するフェリーナさんという女性。松井冬子さんは、フェリーナさんたちと「女性が主役」である街を歩き、お祭りに参加し、一緒に踊り、民族衣装を仕立ててもらい、日本とメキシコの違いなどを語り合います。

そして旅の後半、松井冬子さんはフェリーナさんに、「画のモデルになってくれ、それも自分にとって最高の服装とメイクで。」と頼みます。制作当日、とても貴重な年代物の民族衣装で現われたフェリーナさんは凛としていて、ずっと遠くにある何かを見ている感じ。松井冬子さんは二日間ほとんど言葉を交わさずに制作し、完成した画を見たフェリーナさんは、「自分がここにいる」と静かに言います。

このフェリーナさんは、「ムシェ」と呼ばれる「男性として生まれ、女性として生きることを”選択”した」人。ちなみに「女性として生まれ、男性として生きることを”選択”した」人は「マリマチャ」と呼ばれるそうです。興味深いのはここで「性」を決めるのは「服装」と「職業」。女性ならこの服装、男性ならこの職業、と決まっていて、女性として生きることを選んだひとは、”女性の服装”をし、”女性の職業”につき、そして女性として生きていくそうです。

正装の民族衣装のドレスに身を包んだムシェであるフェリーナさんを、「女の痛み」をテーマにした画家である松井冬子さんが描く。絵画にも「背景/ストーリー」とは別に、はっきりとは言えないけれどなにか「行間」のようなものを初めて感じました。多くを話さずあまり表情も変えない印象のフェリーナさんが、描かれた自分の肖像画に何をみて、描いた画家のことはどう思ったのでしょうか。語られたストーリーを読んでも、フェリーナさんがムシェであることを知っても、この画の印象は見る人それぞれひとりひとり、きっとものすごく違うだろうな、と思った場面です。

ムシェやマリマチャ、今まであまり興味がなかった「肖像画」の「行間」。シタゴコロ満載で見始めた番組でしたが、新しい発見がとても多かったすばらしい内容の番組でした。

* 一度しかみていないので、セリフの引用などの詳細は正確ではないかもしれません。ご了承ください。番組を再放送もしくはオンデマンドなどで見るチャンスがあればぜひご覧になってください。どんな感想を持たれたかいろいろな方の意見を聞いてみたいです。(RT)

– English –

「Reading between the lines on Art Work」

I watched a TV program ”tabi-no-chikara (power of travel)” on NHK. Japanese-style painter Fuyuko Matsui goes to Juchitan, southern town of Mexico, where is known as a town with female having a main role in the society. Matsui’s theme on her works, contrastingly, is known as “pain/female”.
The program features what Matsui will find out in this very different environment, and how this trip to “happiness/female” town could inspires her on her future works.

Felina, who runs a hair salon, attended Matsui throughout her stay. Matsui walked “the town of female” with Felina and her friends, participated several festivals, danced together and talked together. They went to one of the most established shops of traditional dress and Felina chose a dress for Matsui.

At the end of the stay, Matsui asked Felina to be a model with her best attire and best makeup. When she showed up with , she looked so dignified. Her eyes seemed watching somewhere far, not sure if it was past or future, probably both.
During painting, the artist and the model did not speak a word for two days. When the work is done and Felina saw the painting, she quietly said “i am there.”

Felina is born as a male, and chose to live her life as a female. Those persons are called “muxes”, and “marimacha” is a person who was born as a female and chose to live his life as a male. It is quite interesting that what decides male and female are “clothes” and “occupations”. It means what they wear and how they make money decides their “sex”. This must mean “this job is female only”, and “that clothes is male only”.

Matsui who has a theme of “pain – female”, paints a portrait of Felina, who is once a male now a female, in a very beautiful traditional dress with a history.

Knowing the story or a background of how the art work is created always fascinates me, but when i saw the painting, i felt something different from story/background. It was close to “reading between the lines”. The story can be told if needed, and 10 people have 10 different impression on any art work. But i feel this particular painting has much stronger “something” which i can not describe at the moment. Something very internal?

I started to watch this program with other interests (well, needless to say i am a big fan of Matsui-san), but i end up watching knowing about Muxes, Marimacha, and having new interest in “a portrait”. I hope there will be a rerun or on-demand rerun.

Rie Takita

* please note that i only watched once this program, so some of the words i used may not be exact, especially in the lines.

参考資料1:
旅のチカラ「世界一“女”が輝く町へ~松井冬子 メキシコ・フチタン~」
http://www2.nhk.or.jp/hensei/program/p.cgi?area=001&date=2014-01-27&ch=10&eid=28291&f=1860

『「女の痛み」を描く独特の作風で人気の画家、松井冬子。今回「世界一女が輝く町」と言われるメキシコ・フチタンを訪ねる。自分が描いてきたのと正反対の世界をどう描くか?』『新進気鋭の日本画家、松井冬子。内臓をさらけ出した女性や、胎児を宿しながら朽ち果てる女性など、「女の痛み」をテーマにした独特の作風が注目されている。新たな作風を探して向かったのは、メキシコ南部の町フチタン。フチタンでは経済も祭りもすべて女性が主役で、男性は裏方。世界一“女”が輝く町といわれる。松井は、自分がこれまで描いてきたのとは正反対の世界で、どんな人々と出会い、どんなテーマを見つけ出すのか?』

参考資料2:こちらは見そびれました。
地球イチバン「第3の性が輝く街~メキシコ・フチタン~」
http://www2.nhk.or.jp/hensei/program/p.cgi?area=001&date=2014-01-16&ch=21&eid=21945&f=1766

『伝説の女王は語る「私は男でも女でもない。たった一度きりの人生、楽しまなくちゃ」。ありのままの自分をさらけ出し、フチタンの社会を生きる第3の性「ムシェ」たちの物語』『男でも女でもない第3の性として生きる人たち「ムシェ」。メキシコのフチタンでは伝統的な女系社会が残り、働くムシェの姿がそこかしこにある。市場の売り子、服飾デザイナー、料理人…。ムシェたちが大切にするのは自由であること。「たった一度きりの人生、楽しまなくちゃ」と、伝説の女王は語る。しかし、ありのままの自分をさらけ出すのには勇気がいる。念願の女装デビューを控えた若者たちに、漫画家・倉田真由美さんが迫る。』