【映画レビュー】「アバウト・レイ 16歳の決断」 | web gossip

【映画レビュー】「アバウト・レイ 16歳の決断」

(メルマガ web gossip 新聞 第18号 に書いたコラムです)

二年越しにやっと公開された作品です。2015年のトロント国際映画祭で “About Ray” のタイトルで上映されたものの、その後の一般公開が急きょ延期となり、昨年2017年に “Three Generations” というタイトル で公開されました。

日本では、2015年に公開予定が発表されていたのですが、理由がはっきりしないまま延期。あのハーベイ・ワインスタインの編集手直しが何度も入ったことが原因説もあるようですが、やっと今年の2月からタイトル「アバウト・レイ 16歳の決断 」で上映が始まっています。

「エル・ファニングがトランスジェンダー(FTM)の主人公・レイを熱演。そして、アカデミー賞に2度のノミネートを誇るナオミ・ワッツが、恋多きシングルマザー・マギーに、名優スーザン・サランドンが、破天荒なレズビアンの祖母・ドリーに挑んだ。 」(公式サイト)とあるように、レイとお母さんとおばあちゃんの家族の物語です。

映画が始まり、へー、と思ったことが2点。この映画の原題が「About Ray」ではなく「Three Generations」(三世代)になっていたことと、出演者のクレジットの一番目が エル・ファニングさんではなく、ナオミ・ワッツさんだったこと。

そう、この映画の主役はワッツさん演じるシングルマザーなのです。(ファニングさん狙いの皆さん、ごめんなさい。)
ファニングさん演じるレイの生活や苦悩や希望はもちろん物語の軸であり、とてもまっすぐに描かれていますが、話の中心はレイの治療同意書への署名を巡るもの。母のマギーはレイの思い通りにしてあげたい。でも未成年のレイには両親の同意書が必要で、それは自分の決断がレイの一生を決めることである。絶対に失敗はできないし、もし、もしもずっと後になってからレイがこの決断を後悔したら。。と迷い続ける。そして両親の同意書ということは、レイの「父親」に会いに行くということ。

マギーは音信不通になっている元夫を探し出し、自分たちの子供は娘ではなく息子であり、治療が必要だと説明をし署名をさせたい。新しい家族と暮らしていた元夫はレイのことを理解はするけれど、大きな決断はまだできない。元夫の態度は自分一人で育ててきたレイのことを今さら口出しされているようで、マギーは黙ってサインしてくれと強く訴えるけれど、 実は自分だってまだ決心できていない。どっちが先にサインをするか。先にサインをした方がより重い責任を持つわけではないけれど。

マギーとレイが住んでいるのは、おばあちゃんのドリーとパートナーが暮らす家。おばあちゃんはレイに「治療などせず(自分と同じ)レズビアンになればいい」と言い放つめちゃくちゃな人。もちろんレイのこともマギーのことも心から愛しているけれど口は悪いし無神経極まりないキャラクターをサランドンさんがステキに演じています。ちなみにドリーを支えるパートナーのフラニー役はリンダ・エモンドさんがこれまたステキに演じています。

サランドンさんは公式サイトのプロダクションノートに「ドリーが異を唱えた時、彼女は同じような考えを持っている観客に訴えている。でもドリーは自分の愛する子が変わろうとしているんじゃなくて、それは“些細な変化”なんだと気づく。そのことが重要なの。性別や年齢や肌の色の違いなんて、関係ないのよ」 と書いています。

変わろうとしているのではなく、「些細な変化 」である。「些細 」という言葉にどんな英単語が使われたかはわかりませんが、大きな図でレイの人生を描いてみたら、変化の後の生活の方がずっと続くし、大切なのはこれからの人生をレイがどう過ごすか、過ごしたいかということ。

レイにとっては、今変化しなければ、もうレイはレイではなく、今変化しても、レイはレイであることに変わりはない。

レイだけがずっとそれを分っているのだけれど、家族はこの点をなかなか理解できない。レイは男子だということはよくわかっている。でも後戻りできない治療の決断を彼のために今する勇気が誰にもない。

問題はレイにあるのではなく、マギー自身、ドリー自身、元夫自身にある。なぜならレイはよくわかっている。これは今だけの一時的な気持ちなどではないことを。

マギーは、元夫やその周囲の人たち、母親であるドリーとの関係を整えていきながら、なんとなく止まっていたような人生をまた進み始める。
レイの決断をきっかけに、子、親、祖母たちの三世代と周囲の人たちはひとつにまとまり、それぞれ新たな関係を築いていく。

いつの時代も「変化/チェンジ」は大切なキーワードですね。
タキタリエ

資料:
公式サイト 「アバウト・レイ 16歳の決断 」
http://aboutray16-eiga.com/

wiki アバウト・レイ 16歳の決断
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%90%E3%82%A6%E3%83%88%E3%83%BB%E3%83%AC%E3%82%A4_16%E6%AD%B3%E3%81%AE%E6%B1%BA%E6%96%AD

「アバウト・レイ」公開延期の理由はワインスタインにあった。
http://eiga.com/l/WIBqC

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